加齢にともなってまぶたが下がってきたり、目が開きにくくなった、という人はいませんか?
もしかすると、それは「眼瞼下垂(がんけんかすい)」かもしれません。眼瞼下垂が進行すると物が見えにくくなるだけでなく、身体面や精神面などにさまざまな症状が現れることがあります。
さらに、おでこに深いしわができるなど美容面の悩みにつながることも。
そこで、眼瞼下垂の原因や治療法について解説します。
眼瞼下垂はどんな病気?
眼瞼下垂とは、何らかの理由でまぶたが下がり、視野が狭くなったり、物が見えにくくなる病気です。先天性のものと後天性のものとがあります。
先天性眼瞼下垂
まぶたを持ち上げる筋肉(上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん))の発達に問題があったり、それを支える神経などに生まれつき異常があることで発症します。
先天性眼瞼下垂では、両眼のまぶたが下がっているケースもありますが、多くは片眼のみに症状が現れます。片側だけの場合、見やすいほうで物を見る癖がつくことから、もう一方の眼の視力が著しく低下してしまうことがあります(弱視)。それを防ぐため、赤ちゃんのうちに手術を行う人もいます。
後天性眼瞼下垂
大人になってから発症する眼瞼下垂で、おもな原因は加齢です。年齢とともにまぶたを支える腱や筋肉などに緩みが出てくることで、眼が開きにくくなります。そのほか、ハードコンタクトレンズの長期使用が影響したり、眼や全身の病気が原因で発症するケースもあります。
眼瞼下垂と似ているけど違う!?「偽眼瞼下垂」とは?
眼瞼下垂はまぶたを支える筋肉や腱などに問題があって眼が開きにくくなる病気ですが、こうした部分に異常がないのに、同じような症状が現れることがあります。これは「偽眼瞼下垂(ぎがんけんかすい)」とも呼ばれていて、次のようにさまざまな原因が考えられます。
加齢などによるまぶたの皮膚のたるみ
眼の筋肉や腱は正常に働くものの、まぶたの皮膚がたるんで、眼に覆いかぶさってしまうことがあります。
眼瞼けいれん
ほかの病気などが原因で、眼瞼けいれんを起こしていると、眼が開きにくくなることがあります。
眉毛下垂(びもうかすい)
加齢や顔面神経麻痺などが原因で眉が下がり、眼瞼下垂と似た症状が現れます。
このほかにも偽眼瞼下垂の原因はいくつもあります。
その影響は全身にも!?眼瞼下垂の症状
冒頭でお伝えしたように、眼瞼下垂になると、心身にさまざまな症状が出ることがあります。
たとえば、肩こりや腰痛。物が見えにくくなると、無理な姿勢で物を見ようとすることが増えます。その結果、肩や腰などの筋肉が緊張したり、疲れがたまりやすくなって、肩こりや腰痛がひどくなることがあります。また、頭痛やめまいなどの症状を訴える人もいます。
あるいは、物が見えにくいことが大きなストレスとなり、イライラしたり、気分が落ち込むなど、精神面に症状が出てしまうことも。こうした症状は、一見、眼瞼下垂と関係のないように思えますが、眼瞼下垂が改善すると、軽快するケースが少なくありません。
おでこの深いシワも眼瞼下垂が原因!?
おでこにできた深いしわが気になっている人はいませんか。実は、眼瞼下垂が影響していることがあります。眼瞼下垂になると、物を見ようと無理やり眼を大きく見開くことが増えます。
このとき、おでこにはしわが寄ってしまうため、日常的にこうした動作を何度も繰り返していると、次第にそのしわが深くなっていって目立つようになることがあります。
このほか、以前よりも眉の位置が上がったと感じる人や、周りから「眠そうな眼をしている」と指摘されることが増えたという人も、眼瞼下垂の可能性があります。思い当たる症状がある人は、まずは病院を受診してみましょう。
眼瞼下垂の治療法
基本的に、眼瞼下垂が自然に治ることはありません。物が見えづらく日常生活に支障をきたしている場合や、肩こりなど身体症状が強く出ているような場合は、放っておかず、治療を受けるようにしましょう。
眼瞼下垂のおもな治療法は、いくつかの方法があります。たとえば、加齢による眼瞼下垂の場合、まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋や腱の付着部分(挙瞼腱膜:きょけんけんまく)などを縫合、固定する手術が行われることがあります。
また、まぶたを持ち上げる筋肉の動きが著しく悪い場合や、その筋肉を司る神経に麻痺が生じている場合などには、眉とまぶたの間に人工的な材料(つりあげ材)などを通して、眼を開く手術が行われます。さらに、まぶたがたるんでいる場合には、目のすぐ上(二重まぶたができる部分)や眉下の皮膚を切除する手術が行われることがあります。
おでこのしわは美容整形外科などでの治療が必要になることも
まとめ
- 眼瞼下垂とは、何らかの理由でまぶたが下がり、視野が狭くなったり、物が見えにくくなる病気
- 先天性のものと、後天性のものとがある
- 先天性眼瞼下垂は、眼瞼挙筋の発達が悪かったり、それを支える神経に生まれつき異常があって起こる
- 先天性の場合、多くは片眼のみに症状が現れるので、見えにくいほうの眼が弱視になるリスクを伴う
- 後天性眼瞼下垂の主な原因は加齢による腱や筋肉の緩み
- ハードコンタクトレンズの長期使用や、眼や全身の病気が原因になることもある
- まぶたを支える筋肉や腱に異常がないのにまぶたが下がるものは、「偽眼瞼下垂」と呼ばれている
- まぶたの皮膚のたるみ、眼瞼けいれん、眉毛下垂など、偽眼瞼下垂の原因はいくつもある
- 眼瞼下垂になると、物の見えにくさ以外にも、肩こりや腰痛、頭痛、めまい、イライラ、気分の落ち込みなどの症状が出ることがある
- まぶたが開きにくくなると、物を見ようとして無理やり目を大きく見開くことが増えるため、結果としておでこに深いしわができることがある
- 眼瞼下垂のおもな治療法は手術
- まぶたを持ち上げる筋肉や腱の付着部分などを縫合する手術、眉とまぶたの間につりあげ材を通す手術、まぶたのたるみを切開する手術などがある
- 眼瞼下垂の手術を受けても、おでこのしわが残るケースがある
- おでこのしわが気になる場合は、美容外科などで治療を受けることも検討してみるとよい